書評

【書評】LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略

こんにちは、此町サンタです。

皆さんは、現在の日本人の平均寿命は知っていますか?

およそ男性は81歳、女性は87歳のようですね。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47950740Q9A730C1CR8000/

平均寿命はがさらに伸びようとする時代において、我々はどのように生きればいいのかを述べたのが、今回紹介する『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 』です。

本書は翻訳本であり、論文調の(ユーモアがなく少々冗長な)記述となっていますので、正面からがっつり読み始めると、完読するのが難しいかもしれません。

それゆえ、手をつけづらいという方もいると思うので、重要な部分をかいつまんで書評を書きます。面白そうだな、と思った方は是非トライしてみてくださいね。

スマートシティという概念

平均寿命が100年時代に突入しようとする未来で、個人はどのように生きるべきなのでしょう。

本書ではまず現在の社会状況を分析しており、その中で面白いなあと思ったのは『スマートシティ』という概念です。例えば、代表的な都市としてシリコンバレーが挙げられますが、優秀な頭脳を持った学生がいる大学の周りに、質の高いアイデアやスキルを持った人たちが集まる都市をスマートシティといいます。

いま私たちは、人類史上最も特筆すべき大移住を目撃している。それは、農村から都市への人口移動である。2010年、世界全体の都市生活者の数は36億人だった。2050年には、それが63億人になるとみられている。(中略)とりわけいわば「スマート・シティ(賢い都市)」に住むことを望む人が増えているのだ。(p.97

東京(あるいは日本)に住んでいるとあまり想像しませんが、世界では都市に住む人が莫大に増えていて、今後数十年はその傾向が続くとみられています。これはすなわち、質の高いアイデアやスキルが集まる環境に人々が集まっている、ということです。

これは、質の高いアイデアと高度なスキルの持ち主のそばに身を置くことの重要性が高まっていることの現れだ。(p.98

インターネットの発達で、都市から離れる人が増えるだろうといった予想もありますが、対面で話すことがコミュニケーションの頂点にある以上、やはりスマートシティに住んで切磋琢磨して賃金を上げたい、という人は今後も増え続けるでしょう。

そういえば、グーグルも優秀な人材を狭い場所に押し込めるという施策をやっていますが、同じような理念かもしれません。(『How Google Works』を参照。)

テクノロジーの雇用へ及ぼす作用

近年、テクノロジー、特にAIの発展により、人間の働き方や雇用形態が変わるのではないか、という議論が激しくなっています。特に定形型の仕事は機械の方が得意なので、事務作業を始めとしたルーティンワークは消えるのではないか、という考え方が2019年に流行り始めました。

本書では、テクノロジーが雇用へ及ぼす作用をテクノロジー的観点から見た場合と、経済学的観点から見た場合に分けて考えています。

テクノロジーの観点からは、次のような見方になる。イノベーションの速度が目を見張るほど加速しており、機械は人間には太刀打ちできないような知能を持つようになる。その結果、人間の労働者は機械に取って代わられ、いくら教育に投資しても、安定したキャリアと満足いく所得を手にできない時代になるという。それに対し、経済学の観点から見ると、状況はもっと明るい。テクノロジーは雇用を奪うだけでなく、それによって補完される雇用も新たに産むし、経済生産を増やして雇用を増加させる効果もあるというのだ。(p.115,116)

大きく見るとこのような二項対立になるかもしれませんが、確実に言えることは、AIをうまく活用できる人材が活躍の場を広げるのは間違いないでしょう。また、新しいテクノロジーに積極的にコミットすることが必須、という時代はすぐそこに来ている気がします。こう考えると、副業でプログラミングを勉強するのは、新しい時代には打ってつけですね。

変身資産

著者は、不動産やお金などの有形の資産だけではなく、『無形の資産』が100年時代には特に重要になってくると述べ、無形の資産を生産性資産、活力資産、変身資産の三つのカテゴリーに分けています。おそらく変身資産が一目見ただけではわからない概念なので、下記に定義を引用します。

100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要な資産が変身資産だ。自分についてよく知っていること。多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること。新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていることなどが含まれる。(p.127

特に、自分についてよく知っていることが新たな時代には必要、という部分が説得力あると感じました。転職などをしたことがある人はよくわかると思いますが、自分のアイデンティティにおいて、柔軟でないと様々な障害にぶち当たってしまいますし、かといって残さなければいけない部分は残さないとそれまでの自分を活かせません。変化に対する準備がより一層必要になるというのは確かです。

ポートフォリオワーカー

さて、著者によれば、100年時代は新しい三つのステージが注目されるといいます。すなわち、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオワーカーです。副業が進む日本では、ポートフォリオワーカーが重要なステージになってくるので、詳しく見てみましょう。

異なる種類の活動を同時におこなうのがポートフォリオ・ワーカーのステージだ。他の新しいステージと同様、これも特定の年齢層には限定されない。(p.249)

ポートフォリオワーカーの難しい点は、フルタイムのワーカーと比べて、まとまった時間が取りづらいことにあります。著者は、例えば月火水木金に毎日半日ずつ2つの仕事をするのではなくて、月火木は仕事A、水木は仕事Bにした方が効率が良いと述べていますが、本当にそうかは定かではないです。熟練度の観点からいくと、毎日少しずつやった方が伸びる気がするのですが、何をやるかによりますね。

こんな方におすすめ

100年時代に起こるであろう、雇用関係や人生のステージについての尖った未来論が聞きたい方におすすめします。

まとめ

以上、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』のレビューでした。今回は本のボリュームが多かったので疲れましたが、なんとか書評を書くことができました。

しかし、本書はあくまで未来の予測の話なので、信じすぎる必要はなく、自分の頭で未来を考えることが必要になります。結構、大雑把に括りすぎている部分がありますので、その部分は自分で考え、補完するといいでしょう。興味が出た方はぜひ読んでみてくださいね。