書評

【書評】amazon 世界最先端の戦略がわかる

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こんにちは、此町サンタです。

前々から気になっていたGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)の企業研究を勉強したいなあと思い、唯一の物流メーカーで、一番身近な存在のamazon関連の読書を始めました。結論として、本書から初めて非常に良かったです。 

著者の成毛眞氏は、元マイクロソフト代表取締役の社長だった方です。最先端の経営という観点から、amazonの経営とその本質を分析されております。

それでは、一緒にamazonの戦略を勉強してみましょう。

マーケットプレイス

マーケットプレイスで扱う商品は、アマゾン直販の品数の30倍以上で、約35000品目にも上る。(p.64)

皆さんも使ったことがあると思いますが、アマゾン自社商品以外のマーケットプレイスによって、アマゾンの莫大な品数は達成されています。

これだけ商品があると、本当に外に買いに出る必要がなくなりますね。本書でも紹介されていますが、ついに生鮮食料品にまでアマゾンが進出している世の中です。

ここで考えてしまうのは、他の小売店や販売サイトは一体どういった戦略を立てればいいのか、という問いです。

僕は今アラサーですが、バリバリのアマゾンユーザーです。アマゾンプライムには3年前くらいから加入してますし、書籍や音楽機材を絶え間なく注文しています。

しかし思うのは、アマゾンとリアルショッピングでは楽しさが違うということです。例えば、書籍に関して言えば、アマゾンでは売れ筋ランキングや自分が興味ある本に素早くアクセスできますが、リアルショッピングでは本屋を徘徊して自分が意図していなかった本に出会えます。

このリアルショッピングの楽しみを研究することが大事なんじゃないかと。すなわち、他の小売店は、amazonショッピングを仔細に研究して、リアルショッピングでしか味わえない楽しみを徹底的に研究することが必要だと考えます。

また、他の販売サイトは、専門性を高めるといいですね。例えば、音楽機材ではすでにサウンドハウスという販売サイトがやっていますが、商品数、価格、サービス、サイトの見栄えを徹底的に鍛え上げ、専門性があるニッチな分野で戦っていくという作戦が考えられます。

上記の作戦はすでに多くの会社がやっていると思いますが、いずれにせよ、amazonの企業分析を仔細に行うことでアイデアが浮かんできます。

FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)

マーケットプレイスはただのオンラインの場を提供するだけだが、FBAを利用すると、(中略)商品の保管から注文処理、出荷、決済、配送、返品対応まですべてをアマゾンがまとめて代行してくれるのだ。(p.67)

これがすごいです。初期費用はかなり安いですし、何よりプライムマークという消費者も認知している『信用』を得ることができます。

個人経営や中小企業によって何より大事なのが『信用』の獲得であるということは、およそ間違いのない真実だと思います。そして『信用』は、構築されるのにかなりの時間とクオリティーが求められます。

事業を始めたばかりの信用のない個人・企業がアマゾンのお墨付きをもらって、商品を売ることができるのは非常に恵まれてると思いますし、チャンスですね。

消費者側の観点から考えると、出品者がいくつかある場合に、ただのマーケットプレイスの出品者だと詳細に比較しますが、プライムマークが付いているとその比較が適当になったり、あるいはなかったりします。

上記のような判断を、消費者はより瞬時に判断する時代になっていますし、信用の重要性はますます増していると実感します。従って、新規参入者は特にプライムマークを一つの商売の出発点にするのも重要な戦略です。(その後のブランディングについては課題ですが

莫大なキャッシュフロー

キャッシュフローとは、企業のお金の出入りのことを言います。キャッシュフローには営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、投資キャッシュフロー、純利益などの項目があります。この内、アマゾンはフリーキャッシュフローの使い道が極めて挑戦的な点に特徴があります。

アマゾンは、フリーキャッシュフローも2009年度までは営業キャッシュフローに比例して伸びているが、注目すべきは2010年度から12年度にかけて減少している点である。 (中略)この時期にアマゾンは、本業で稼いだ営業キャッシュフローのほとんどを投資に回しているのだ。(p.124

莫大なキャッシュを圧倒的な設備投資に回せば、その質が一定以上のものならば、圧倒的な結果が出るのは明白ですよね。また、アマゾンはその投資が物流部門やM&Aだけではなく、新規分野の開拓に潤沢に充てられるところに強みがあります。

CCC(キャッシュコンバーションサイクル)

CCCとは仕入れた商品を販売し、何日間で現金化されるかを示したものである。このCCCは小さければ現金を回収できるサイクルが短いということで、手元にキャッシュを長い時間持つことができる。(p.128)

アマゾンのCCCはマイナスだ。つまり、ものが売れる前から入金されているのだ。(p.129)

ものが売れる前から入金されていると何が有利かというと、例えばメーカーならば、製品を売る前から資金が入っている、もっと言えば、製品を作る前から資金が入っている状態になるので、広告などに資金を積極的に投入することができるし、また、アマゾンなどの小売企業ならば、商品を売りながら設備投資を行うことができる。すなわち、安定的でスピーディーな経営をすることができます。 

アマゾンに関して言えば、アマゾンプライムからも会員費を先に徴収することができてますね。会員費は実は企業にとっては大きな意味を持つ運営費になっていることがわかります。

AWS (アマゾンウェブサービス)

AWSは、クラウドサービスを提供する事業だ。IT業界ではアマゾンは世界最大の、企業向けクラウドサービス提供会社として認識されている。(p.156)

大企業のみならず、国家組織ですらAWSのクラウドサーバーの使用を開始しています。先日、CIAのクラウドサービスは、(おそらくトランプ大統領の意向で)マイクロソフトが受注しましたが、その圧倒的なサービスからAWSの勢いはこの先も続くでしょう。

プラットフォーマーヘの挑戦   

アマゾンは、莫大なキャッシュに支えられるがゆえに、失敗を恐れない会社ということをもできよう。これも、プラットフォーマーになるためのひとつの条件なのだ。

プラットフォーマーになるためにどうすればいいのか、という問いに対してはamazonのように莫大なキャッシュがあればそれを新分野に惜しげもなく投下すれば、プラットフォーマーとしての可能性が開けるという回答はできます。

資金がないところでどうやってプラットフォーマーを目指すのか、という問いへの回答は難しいですが、規模は違えど、失敗を恐れずに様々なアイデアを試し発表するというマインドは、不可欠な要件だと思います。世界を変えるアイデアは、トライアルアンドエラーでしか生まれませんね。

わかっているんだけれど、僕らは失敗に弱いです。エジソン先生の格言を思い出し、揺るぎない挑戦マインドを忘れずに日々過ごしたいものです。

まとめ

失敗を恐れぬ経営より、AWSに代表されるプラットフォーマー企業を抱え、その途方もない領域を広げるアマゾン。その経営と本質を知るために、本書は非常に有益です。

以上、『amazon 世界最先端の戦略がわかる』のレビューでした。amazonの戦略を非常にバランスよくしることができるので、皆さんも是非読んでみてくださいね。