こんにちは、此町サンタです。
amazonの経営研究第2弾として、『amazon「帝国」との共存』を読みました。骨太の本を2冊読むと、知識が体に染み込む気がします。
著者のナタリーバーグ氏とミヤ・ナイツ氏は小売アナリストであり、本書も小売業界の現状とこれからを分析しています。
成毛眞氏(『amazon 世界最先端の戦略がわかる』の著者)が監訳とまえがきを書いているので、日本の読者はスムーズに本書に入り込むことができますね。
なお本書は、詳細かつ具体的な分析になっていますので、成毛氏の著作を先に読むことをお勧めします。
それでは、スタートです!
Contents
小売業界の未来予測
アマゾンの実店舗展開の動きがeコマース専業企業への止めの一撃になるだろう。
「実用的な買い物」と「娯楽的なショッピング」がより明確に区別されるだろう。(p.57)
現代の小売における勝利とは、アマゾンの傘下にない分野で秀でること、ひいては商品よりも体験、サービス、コミュニティ、専門技術を強化することを意味する。(p.58)
上記の引用は著者が小売業界の未来予測をしたものです。キーワードは、『実店舗展開』『娯楽的なショッピング』『体験』です。
本書はこの3点を主軸として、アマゾンという企業の分析と、アマゾン以外の企業がどのような戦略で経営を行えば良いのか、を論じています。
本記事ではあまり取り上げませんが、アマゾンの実店舗展開については、他の競合企業にとっては脅威ですよね。
アマゾンは、ホールフーズというアメリカの高級スーパーを買収したり、無人キオスクであるアマゾンゴーを試したりと、着実に実店舗展開を進めている中で、他のeコマース専業企業も実店舗展開をせざるを得ない未来を描いています。
体験型小売戦略
アマゾンのもっとも大きな価値とは、生活に必要な必需品を含めた実利的、機能的な買い物が、最大限に快適になった点にあることは間違いないです。その上で、著者は以下のように語っています。
今後は機能的な買い物と娯楽的な買い物との違いがさらに大きくなるだろう。機能性ではアマゾンと肩を並べられるはずもなく、それならばライバル企業は娯楽的要素に重点を置くしかない。
現代の小売ビジネスの勝利とは、アマゾンにできないことで抜きんでることであり、つまりは、商品ではなく体験やサービス、専門知識に大きな重点を置くことを意味するのだ。(p.325)
アマゾン以外の小売店は、良い商品を仕入れ、戦略的に安く売る、だけでは到底アマゾンと共存することはできないということです。店内を居心地のいい空間にしたり、何かしらの体験ができるようにすることが必須要素になってきます。
すなわち、その店に行けば何かしら楽しい体験が出来る、だからその店で商品を買うというサイクルを作っていかなければならないということですね。
例えば、デパートやショッピングモールについて、今まではただブランド店や小売店が並んでいるだけだったものを、余っている空間を体験スペースにして、イベントを行うなどの戦略は有効かもしれません。
さらに言えば、『イベント』の価値が上がってきそうですよね。アパレル小売店で考えるならば、コーディネート講座はいいかもしれません。
そのお店の商品の宣伝になりますし、何より消費者が体験し、センスを磨くことができます。このような消費者に価値のある体験を企画していくことが重要な時代になります。
また、専門店には大きなチャンスがあります。例えば、書店で考えると、もちろん巨大な書店は生き残るでしょうが、ニッチな本を集めている書店も今後はより価値が高まるのではないでしょうか。なぜなら、そこにはアマゾンが持ち得ない専門的な強みがあるからです。
ミレニアル世代の購買傾向
また、面白いなあと思ったのは、ミレニアル世代の価値観と購買傾向です。
ミレニアル世代のwikipediaはこちら。
十分な学歴を持ちながら、ローンを抱えたミレニアル世代は、ミニマルだが意義深く、社会的意識の高いライフスタイルを選択する傾向が強い。これが、購買傾向の世代交代へとつながり、今後数十年で小売業界に大きな影響を与えると考えられる。
財布をめぐる戦争は、デジタルネイティブのミレニアル世代が消費者グループとして支配力を強めることだけでなく、各世代の支出の対象が物品ではなく、旅行、エンターテインメント、外食などの体験型へ移行することで、ますます激化すると予想される。(p.109)
僕もこのミレニアル世代の一員ですが、親世代と物品に対する価値観の違いを実感しています。例えば、両親のスーパーマーケットでの輝いた目を見ていると、食料品に対する執着心や幸福感が違うんだなあと思います。
旅行ビジネスに関しては、プラスアルファの体験を作りたいですね。例えば、しばらく続くであろうInstagramの隆盛を利用して、インスタ栄えするスポットを徹底的に作れたらビジネスチャンスになります。
まとめ
以上、『amazon「帝国」との共存』の感想でした。体験型小売という考え方はこれから、小売経営のスタンダードになっていくでしょう。
なお本書は、アマゾンのみならずこれからの小売業界について勉強したい方にお勧めです。興味が出たら、是非読んでみてくださいね。